ピークシフトという節約術。我慢しない節電のはじめ方
電気を使う『時間帯』をずらすだけで電気代が下がる、ピークシフトという節約術。仕組み、家庭で取り入れる手順、向き・不向きまで、無理なく続けるコツを丁寧に解説します。
「節電」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのはエアコンを我慢することではないでしょうか。しかし、夏の猛暑日にエアコンを止めるのは健康リスクが大きく、現実的な節約手段とは言えません。実は近年、「我慢しない節電」として注目されている考え方があります。それがピークシフトです。
ピークシフトとは、電気を使う「時間帯」をずらすことで電気料金を下げる手法のこと。同じ量の電気を使っても、いつ使うかで支払い額が変わる——その仕組みをうまく利用するのが、ピークシフトの基本的な発想です。
なぜ「時間帯」で電気料金が変わるのか
電気は、貯めておくのが難しいエネルギーです。需要が増えればその分、発電所が稼働を増やさなければなりません。とくに夏の昼間や冬の夕方は、家庭・オフィス・工場の電力需要が一気に重なる「ピーク時間帯」となり、発電コストが大きく上がります。
そのため近年は、時間帯別料金プランを導入する電力会社が増えてきました。代表的なものは以下のようなタイプです。
- 夜間が安いプラン:23時〜翌7時など、夜間の単価を安く設定
- 昼間が高いプラン:13時〜16時の真昼の単価を相対的に高く
- 市場連動型プラン:30分ごとに変動する卸電力市場の価格に連動
家庭の電気の使い方が「昼に偏った専業主婦世帯」なのか、「夜型の共働き世帯」なのかで、得になるプランは大きく変わります。ピークシフトは、この時間帯別料金との相性が良い節約術なのです。
ピークシフトで効果が大きい3つの家電
家庭の電気使用量の中で、時間帯をずらしやすい家電は意外と限られています。逆に言えば、「動かす時間を変えるだけ」で効くポイントが絞り込めるということでもあります。
1. 食洗機
食洗機は1回あたり1〜2kWhを消費する、家庭内ではかなり重い家電です。多くの機種にはタイマー機能がついており、就寝中の安い時間帯に動かすことができます。夕食後すぐ回すのではなく、寝る前にスタートを予約するだけで、夜間料金プランなら月に数百円〜千円規模の差が出ます。
2. 洗濯乾燥機
洗濯乾燥機も、1サイクル1〜2kWhと消費電力が大きい家電です。朝7時に終わるようタイマー予約しておけば、夜間の安い時間帯に運転を完結できます。共働き世帯にとって、「朝には乾いている」というのは時短の面でもメリットが大きい使い方です。
3. 給湯器(エコキュートなど)
ヒートポンプ式給湯器は、深夜の安い電気でお湯を沸かすことを前提に設計されています。家庭にエコキュートがあるなら、夜間料金プランに切り替えるだけで効果が一気に出ます。逆に、夜間料金が割高になる時間帯別プランを選ぶと、給湯コストが跳ね上がるので注意が必要です。
ピークシフトを始める3ステップ
家庭でピークシフトに取り組むなら、次の3ステップで進めるのが現実的です。
ステップ1:自分の家のピークを把握する
スマートメーターが設置されている家庭であれば、電力会社のマイページなどで30分ごとの使用量グラフが確認できます。まずは1週間分のグラフを眺め、「自分の家のピークは何時ごろか」を把握しましょう。
ステップ2:ずらせる家電を1〜2つだけ選ぶ
最初から完璧を目指す必要はありません。食洗機と洗濯乾燥機の2つを「夜間スタート」にするだけでも、十分に効果は出ます。続かない節約は意味がないので、生活リズムを大きく崩さない範囲で選ぶのがコツです。
ステップ3:プランの見直しを検討する
家電を夜寄りにシフトできるようになったら、いまの料金プランが本当にその使い方に合っているかを確認します。夜の使用比率が高くなったのに、昼夜均一の従量電灯プランのままだと、せっかくのシフトが料金に反映されません。
ピークシフトが「合わない」家庭もある
最後に、誤解を避けるために触れておきたいのが、ピークシフトには向き・不向きがあるという点です。
- 在宅勤務が中心で、日中の電力消費が大きい家庭
- 夜は早く就寝し、家電を動かしたままにしたくない家庭
- マンションで深夜の家電稼働音が気になる家庭
こうした家庭では、無理に時間帯をずらすより、昼夜均一の単価が安いプランや、基本料金がゼロのプランを選んだほうが、結果的にお得なケースがあります。ピークシフトはあくまで「選択肢の一つ」であり、すべての家庭が取り組むべき節約術ではありません。
電気代を下げるアプローチは、「使う量を減らす」だけではありません。「使う時間をずらす」というアプローチもまた、生活の質を落とさずに支払いを軽くする現実的な手段です。ピークシフトは、家計と暮らしのバランスを取りながら続けられる、現代的な節約術と言えるでしょう。
まずは1週間、自分の家の「電気のピーク」を眺めてみる。そこから、家にぴったりの節電のかたちが見えてきます。